イオニザシオン/ヴァレーズ
Ionisation / Edgard Victor Achille Charles Varèse
[使用楽器]
Player 1
Crash (china) Cymbal
Bass Drum, very deep
Cencerro(muteしたカウベル)
Tam-tam (high)
Player 2
Gong
Tam-tam (high)
Tam-tam (low)
Cencerro(muteしたカウベル)
Player 3
Bongos
Side-drum
2 Bass drum (medium, small)
Player 4
Caisse Roulante (tenor drum without snare)
Tambour Militaire (field drum with snare)
Player 5
Siren (high)
String drum ( Lion's Roar)
Player 6
Siren (low)
Slapstick
Guiro
Player 7
3 wood blocks (high, mid, low)
Claves
Triangle
Player 8
Caisse claie (Snare drum with snares relaxed)
2 Maracas (high, low)
Player 9
Tarole (a kind of piccolo snare drum)
Caisse claie (snare drum)
Sus.Cym
Player 10
Pair cymbal (or Sus. Cym with stick)
Chime
Sleigh bell
Player 11
Guiro
Castanets
Glockenspiel with resonator(celesta)
Player 12
Tambourine
2 Anvils (the first higher)
Grand Tam-tam very deep
Player 13
Slapstick
Triangle
Sleigh bell
Piano
[楽曲説明]
イオニザシオンは、エドガー・ヴァレーズ(1883~1965)によって1931年に作曲された作品で、単独の西洋音楽作品としては最も古い打楽器アンサンブルの一つです。イオニザシオンとはフランス語で電離(イオン化)を意味し、英語読みではイオニゼーションもしくはアイオナイゼーション(Ionization)となります。
この「電離」という物理現象と、曲をリンクし、「分子や原子のミクロな現象を、打楽器を用いて抽象的に描いた標題音楽」ととらえて考察を加えたくなりますが、この物理現象は、曲の内容に直接的には関係しないと考えられます。というのは、作曲者自身が「私は(他の)作曲家(からの影響)と同じように自然界の物質や物理現象に影響されなかった」と述べているからです。したがって本作品は、主題やその変形等によって構成される、「打楽器による音楽表現のみを用いた実験的な絶対音楽」ととらえるほうがしっくりくるものがあります。
本作品は、13人の奏者を要する、編成の大きな打楽器アンサンブルです。使用される楽器も、下記のようにいわゆる「スタンダード」な打楽器とは大きく異なります。
曲は全部で6分半、わずか91小節からなり、大きく50小節までが前半、51小節目から中間部、75小節目からコーダと考えられます。前半部は主に二つの主題(下記)が奏されますが、特にスネアドラムによる第一主題(譜例1)は、楽曲全体を通じて形を変え音色を変え繰り返し登場します。
譜例1 第1主題
譜例2 第2主題
中間部に入る前には、5連符からなる第二主題(譜例2)が登場し、多くの楽器によるユニゾンで奏されます。中間部び入ると、Anvil(金床)をはじめとする金属音が主体となって楽曲が進みます。
コーダにおいては、ピアノ、チャイム、グロッケンといった、明確な音程と持続音を有する楽器が登場しますが、ここでも従来の調性に基づくメロディーは出現しません。
音楽全体を通して印象深いのは特殊楽器の音色ですが、特にサイレンとライオンズローアはなかなか耳にすることがないものです。
[Patissimoな一言]